上達への近道

~ 俳句上達のためのノウハウ ~

やまだみのる

目次

はじめに

俳句上達のためのノウハウについて書いたものです。 このテキストを読んだら、忽ち俳句が上達する・・ということは無いでしょうが、 回り道をしないで学ぶための指針にはなると思います。 小路紫峡先生( 俳誌「ひいらぎ」主宰)が徒然に教えて下さったことを、 思い出しながらまとめました。

作句態度の基本

楽しい俳句ライフを確立するために、最も大事な基本姿勢について説明します。

自然写生に徹する

俳句は理屈をいうのではなく、実感を詠むのだということは何度も強調してきました。 初学のときに考えて作る癖が付くと、後々軌道修正するのはとても難しいからです。

心象や人事を詠んだ句は、どうしても理屈っぽい作品になりがちです。 ですから初めのうちは、こうした題材を避けて自然写生に徹して欲しいのです。 単なるスケッチではなく、対象を凝視して心に響いてきた生命の尊厳を五・七・五に詠むのです。 これを繰り返しているうちに徐々に感性が磨かれてきます。

吟行で作る

卓上の鉢花を詠むのも一応は自然写生ですが、 できるだけ戸外に出かけていって句を作るほうが、感動が得られやすいです。 遠出をする必要はなく、散歩でもいいのです。 時間がなければ自宅の庭でも良いと思います。

吟行での作り方の詳細は後述しますが、 とにかく頭の中を無にして心を集中し、自然と向かい合って下さい。 そして心に響いてきた感動を素直な言葉で表現するのです。 調子が整わなくても気にしないで、どんどん句帳に書きとめていきます。 未熟な表現についてはいくらでも添削でお手伝いできますが、 作者の代わりに添削者が感動してあげるということはできないのです。

たくさん作ってたくさん捨てる

どしどし作って毎日句会に投句して下さい。 毎日句会の「みのる選」は、何よりも大切なライフワークと思って取り組んでいます。 全ての投稿作品を拝見し、未完成であっても、感動をとらえている作品は添削して選びます。 みのる選にはいらなかった句は没ということで捨てて下さい。 これを繰り返し訓練していくうちに、 自然に句のよし悪しの基準が育っていくのです。 没になった作品にいつまでも固執する人がいますが、 もともと感動のない作品をいくら練り直しても佳句にはなりません。

季語は俳句の生命

伝統俳句は季語が生命です。季語の覚え方について以下のステップがあります。

基本季語を覚える

季語をたくさん知っているほど句が作りやすく、 より具体的に感動を表現できます。 俳句を初めて一年経つとほぼ基本的な季語を覚えます。 そして三年を経て、ようやくひとつ一つの季語の味の違いが解ってくると言われています。 つまり季語を覚えることと、その固有の味わいを知ることとは違うのです。 季語の持つ深い味を知るには季寄せではなく、例句の載った歳時記の方が適切です。

季語のバリエーションを覚える

一つの季語でもいろいろバリエーションがあることはもうおわかりですね。 例えば「春」という季語を例に歳時記を見てみましょう。 春立つ、春の朝、春浅し、春深し、春宵、春行く、春の空、春の雲、... ただ「春」とだけ言うよりそれぞれ違った意味があり、より具象性があります。 出来るだけ具体的な季語を選ぶことが佳句を生む秘訣ですから、 いろんな季語のバリエーションを知っていることはとても大切なのです。

選句力を養う(鑑賞力を育てる)

初心者は、熱心に作句しますが、選句をおろそかにする傾向があります。 どのように選べばよいのかが分からないからです。

選句力は作句力の裏返し

作ることより選ぶ方が簡単だと思いがちですが実際は逆です。 まぐれで佳句が生まれることはあっても、フロックで良い選句をすることはできません。 高浜虚子先生は「選は創作なり」と申されました。 選句力を養うことは作句力を向上させることに繋がるのです。

真剣に選ぶ

選句するときには、真剣に選ばなくてはいけません。 披講のときにも、選者や上級者の選と自分の選がどう違うかに気を付けてチェックしておくと、 後で復習するのに役立ちます。 自分の句が選ばれるか否かにしか興味を持たず、ぺちゃくちゃ私語をしたり、真剣に選ぶ姿勢のない人がいますが、 これでは上達は望めません。

直感で選ぶ

俳句は理屈ではなく感性だといいました。 感性というのは直感的なもので、 あれこれ考えた末に納得して感じるものではありません。 はじめは、ことばも知らないし、経験も少ないですから、 よく分からない句に出くわしますが、分からないものはいくら考えても分かりません。 直感的に心に響いてきて、いいなと思う句を選べばいいのです。 インターネット句会ではゆっくり時間をかけられますが、 本物の句会では限られた時間内に粛々と清記稿をまわして句を選んでいきます。 全体のペースを乱さないように、 自分のところで清記用紙が滞らないように配慮することは最低限のマナーです。

"パッと見て、サッと選ぶ"

という訓練をして下さい。 ぐずぐず選ぶ癖がつくと、後で直しにくいものです。

秀句を鑑賞する

選句力を養う一番良い方法は鑑賞力を育てることです。 上級者の鑑賞文を読むことで選句のこつを掴めます。 また、実際に自分で鑑賞して、文章にまとめることは最も良い勉強法なのです。 GHにある鑑賞のページをリンクしておきます。

吟行の基本姿勢

ただ漫然と吟行しても句は詠めません。 吟行に行くときの心がけについて説明します。

ひとりで吟行に行くときの注意

時間の制約もなくお喋りもしないので集中して作句できます。 ただ後で句会がないので、”どうしても作らなければ”という気持ちが湧かず、 結局、一句も作れなかったということも多いです。 10句出来るまではがんばるというような強い意志を持つことが必要です。

仲間と一緒に吟行するときの注意

競って作句をするので刺激しあって意欲的に作れます。 また物知りの先輩に、いろいろ教えて貰えたり質問できたりという便利さもあります。 複数で吟行するときは必ず句会をするようにしましょう。 たとい二人でも、後で見せあって感想を語り合うことは出来ますし、 三人以上なら、必ず句会を設定しておきます。 そうすることで苦しみながらでも句を作るようになります。 何よりも句会は楽しいものです。 最も気を付けないといけないのはお喋りし過ぎないことです。 勿論、集中して作句している人の邪魔をしてもいけません。

一箇所で頑張る

あちこち移動し過ぎると句が作れません。 ここと決めたら、その場所で徹底的にがんばってみる。 要するにこころを集中させることが大切なので、次々移動するとそれが出来ないからです。 同じ場所で粘るほうが思わぬ変化や動きを発見できる確率が高くなるのです。 これは、わたしの実経験ですから断言できます。 見えている表面的な部分だけを観察するのではなく、 見えないものを見つける力(心眼)を身につけたいですね。

まず季語を見つける

吟行での第一句目というのは、なかなか生まれないものです。 ただ漫然と歩いたり眺めていたりしても句は出来ません。 そんなときはまず季語を探しましょう。 見つかればそこにしばらく腰を落ち着けてがんばる。 これが吟行の基本姿勢です。 前日に吟行地の情報、どんな花が咲いているとかどんな施設があるかなどを、 予習していくのも大事なことです。 小型の季寄せは吟行の必携品ですね。

始めは大量生産で

何でも良いからまず一句作ってみましょう。 最初から良い句を作ろうと構えるとなかなか句が生まれません。 何も考えずにどんどん作っているうちに調子が出てくるのです。 同じような句ができても気にせず、どんどん句帳に書いていきましょう。 あとで推敲するときに5番目の上五と9番の中七、下五を組み合わせるといい句になった、 ということも多いのです。

調子が出てきたら感性を集中させる

一箇所で我慢して粘っていると、徐々に調子が出てきます。 そこで、さらにこころを集中させてください。 集中させるコツは、俗事的なことを全く忘れて無我の状態になることです。 仕事のこと、家族のことなど気になるようなことは全部払拭して、 詠もうとする対象にこころを遊ばせます。 これが上手にコントロールできるようになると、 俳句はよい気分転換になってストレス解消にも役立つのです。

推敲法について

超初心の段階では、推敲のやりかたも分からないので、 あまりこれ繰り回さないで指導者の添削を受けるのが望ましいです。 けれども、いつまでも添削に頼っているのも進歩がありません。 自分の句、他人の句を問わず、 指導者がどのように添削しているかを真剣に復習していると、 だんだん分かってきますから、少しずつ自分で推敲する訓練も大切です。

作りっぱなしは駄目

吟行で作った作品を作りっ放しにしてはいけません。 かならず推敲する習慣をつけましょう。 うっかり無季(季語がない)になっていることも案外多いのです。 もちろん季語が二つ以上あるのもいけませんね。 自分には分かっても、 他人には何の事か分からないような表現になっていることもあります。 時間を置いて、見直すことでそれに気づくことは多いのです。 必ず推敲する習慣をつけましょう。

辞書を活用する

漢字のわからなかったものは辞典を引いて直しておきましょう。 曖昧なことばを使ったと思ったら、国語辞典で確かめましょう。 また、他にもっと適切なことばが無いかを調べるのも大切です。 類語辞典が一冊あると推敲には重宝します。

類想(類句)について

俳句の世界では、類想、類句に関するトラブルは日常茶飯事といっても過言ではありません。 この問題については自他に関わらず、しっかりとした信念をもっておくことが大切です。

気にしない

「その句はわたしが先に作っている!」 などとよく騒ぐ人がいますが、気にしないことです。 同じ情景を観察していると、 他の人とよく似た類句や類想が生まれるのは当然です。 また不思議なように素直に一句が生まれることがあり、 これは、誰かの句集か歳時記などで見た句ではないか? と、自分を疑うようなこともありますが、 初学のうちはあまり気にしないほうが良いです。 必要以上にこれを気にしだすと句が作れなくなります。

潔く捨てる

意図的に類句を作って投句することは論外ですが、 そうと知らずに投句してしまうことは特に恥ずかしいことでも、 悪いことでもありません。 ただ、類句も類想も発覚したときには潔く捨てましょう。

"どちらが先に作ったか"

などと論争するのは見苦しいものです。 類句や類想の句が生まれるということは、 個性に欠けているからだと謙虚に受け止めればいいのです。 つまらない類句論争をするよりも、 類想のない個性的な感性を育てることのほうがが大切なことです。

継続は力

生活環境、仕事の関係、自分自身の好不調によって、誰にも波があるものです。 けれどもどんなに足踏みしてもいいから、決して休まないという心がけが大切です。

作句、投句を休まない

忙しいからとか、 どうも調子が出ないからという理由で作句や投句を休んではいけません。 一日でも休むとそれだけ感性は退化すると思わなければいけません。 どんなに忙しくても十分くらいの時間は取れるでしょう。 一日一句を心がければ月に三十句は作れるはずです。

不調になったら

感性が鈍ってくるとつい頭で考えて作るようになり不調に陥ります。 そんな時は少し作句を離れて、先生の句集とか、 結社の選集(入選作品の中からさらに厳選してまとめられた作品集)などを読みましょう。 良い作品を読むことで鈍った感性を軌道修正するのです。 また、投句はできなくても選句だけは続ける・・ということも大切なことです。

結社に入会する

俳句上達の最も近道は、なんと言ってもこれに尽きます。 ”もう少し上達してから”と考える人もいますが私は反対です。 なぜなら、独学で上達することは難しく、一度変な癖がつくと直らないからです。 早い段階から専門の先生の指導を受けることはとても重要なことなのです。 ただし、半端な気持ちで結社に入会してはいけません。 句会に参加できないとか、投句もしたりしなかったりというようでは、 入会する意味もありませんし、当然、上達も望めません。

現実を知っておく

結社では半年分とか一年分とか一定の誌代を前納しなければいけません。 句会に出席するときにも参加費が必要です。 必要経費のほかに指導してくださる先生に対する謝礼が含まれる場合もありますから、 意外と高額なケースもあります。 情報は大抵事前に知らされますから納得して参加しましょう。

そのほかさまざまなお付き合いも生じてきます。 このあたりは俳句に限ったことではありませんがある程度の覚悟は必要です。 いずれにしても、

”無料で教えてくれる優秀な学習塾は無い”

ということを十分納得しておく必要があるでしょう。

結社の選びかた

結社の選びかたにベストという方法はありません。 その人の作風や住んでいる地域などにも関連するので、 どの結社が良いかということは、一概に言えないのです。 俳句入門小講座の中で、 わたしのケースの例を書いていますので、参考にして下さい。 もし、よくわからなかったり、決断がつかなかったりしたときは、 メールで相談してくだされば私にわかる範囲でお答えします。

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