みのる:私の知るところでは飛騨小阪駅が丸太小屋ですね。「山滴る」は、草木の葉で覆われて緑が滴るように見える夏の山を形容する言葉として季語とされます。似たような季語に万緑、青嶺があります。これらは逞しい夏山の緑を感じさせますが、山滴るは、「滴り」という響きから涼しさを感じさせる山の雰囲気ですね。「万緑の山の駅舎は丸太小屋」との違いを感じ取りたいです。

えいいち:「山滴る」の季語のバリュエーション(?)で切ることなく詠みあげているので山深い静かで冷んやりとした空気の澄んだ駅に降り立ち自分を包む美しい自然を堪能している作者を想像しました。

康子:夏山の木々や葉が青々と茂っている様子と、丸太小屋の駅舎との対比が美しいです。電車に乗り山が近づき、気分が高まって来た中で着いた駅は丸太小屋だった。降りてみたら木の香りに包まれてますます気分も高まったのでしょう。「売店はサイロの形牧うらら」を思い出しました。

かえる:作者は電車でお山の駅を訪れたのですね。もしかしたら、随分前に同じ駅を訪れたことがあり、その頃は無機質な田舎駅だったはずなのに、洒落たログハウス風に様変わりしていてびっくりされたのかもしれません。真夏の濃い緑が盛り上がるような山を背にして、丸太小屋の駅舎は童話のような可愛らしさだったのではないでしょうか。

澄子:山滴る という季語がすべてを表し効果的です。緑が輝き満ちて草木の葉で覆われ まるで滴るような盛んな夏山の景が自ずから浮かびます。その中のログハウス駅舎……避暑地のお洒落な駅舎というよりも 山中にぽつんとある登山道入口付近の駅舎のような印象を受けました。

むべ:山間部にある小さな駅はさながらログハウスにいるようなデザインで、降り立った作者はうれしい驚きを感じたのではないでしょうか。駅舎の背後には緑滴る山が迫っています。標高も高く、日差しは強く、されど湿度は低くからりとしています。いのち溢れる夏山の美しさ・鮮やかさが絵画としてイメージできる御句です。もしかしたら、この後ハイキングの予定だったかな、と想像しました。