みのる:白砂浜に見目よき磯馴れ松がくっきりとその影を落としているというのです。梢の松葉も濡るるばかりの明るい月光がさし届いているのでしょう。おそらく満月でしょう。松影に焦点をしぼることで美しい白砂青松の景や煌々とした月の美しさも連想させているところがうまいですね。その全てを詠みこもうすると難しく冗長な句になりがちですね。

澄子:月夜浜辺の景ですが 月光が宿す神秘的な美しさを感じます。白砂青松 例えばお住まいの近く風光明媚な須磨海岸の景を想いました。満月の夜なら松の葉一本一本も明瞭に見えたことでしょう。黒々と影を落とす松陰が堤防海岸線に添って続き 砂浜との明暗くっきりとした景が浮かびました。昏くひかりながら揺らぐ海や白く小さな波濤がたてる穏やかな波音も聞こえてくるようです。

康子:三保の松原を想像して鑑賞してみました。浜辺には太く大きな松が何本も立ち並んでいます。その松の影が濃いということは満月ほどに明るい夜の浜辺を歩いているのでしょう。その影の濃さに焦点を当て「落としけり」を下五に置いたことにより、澄んだ秋の空に浮かぶ月の美しさがより強調されて伝わってきます。海の白波や波の音も想像でき、浮世絵を見ているような句でした。

かえる:季節は秋。澄み渡った空に昇る月は光量を増しているかのようです。砂浜は、関東のような砂色でなく、真っ白なものを思い浮かべます。澄んだ空に明るい月。真っ白な浜に黒々とした松影。伸びる、ではなく落とすと表現されていることで、月の視点で詠まれたのかと推察いたします。

むべ:きれいな夜の景です。月は満月かそれに近い月齢で皓皓と浜を照らし、歩いている作者の目には、浜に松がつくる影が映っています。とても明るい夜に、松影と浜のコントラストがくっきりと浮かび上がります。浜は白砂の浜でしょうか。人気のない静けさも感じます。