みのる:作者は関西人、台風接近のニュースを見ながらその予想進路が九州とかあるいは関東とかという転勤されたご子息の赴任地を直撃しそうなのである。できることなら進路予想が外れて直撃を免れてほしいと切に祈り願う母の愛を感じます。

えいいち:台風が来て赴任先のお子さんが心配なのですね。句から感じる作者の心境は、もう心配で心配で食事も喉を通らないくらい不安でしょうがない、という感じです。激しい雨風の台風が今作者の住んでいる地へ来ているか、あるいはテレビニュースの映像で子の赴任地へ襲来した様子を見たのだと思います。話題の赴任先ですが、上五の「台風来」という措辞と、台風の恐ろしさを今まさに実感しなければ、こんなに心配はしないでしょうから、私は日本国内だと思います。

澄子:遠く離れた子供を思う親心をお詠みになっていますが 私もなんとなく赴任先は海外のような気がします。異常気象で尋常ならぬ これまでとは比較にならぬ眼を覆うような被害がもたらされる昨今 遠く離れた我が子なればこそ 無事を願う思いは募っていったことでしょう。素直な気持ちが吐露された御句と思いました。

むべ:家族、特に子を案じる親心がしみじみと感じられる句です。お子さんはなんとなく海外にいらしたのかなと思いました。(正確には台風でなくタイフーン、サイクロン、ハリケーンだったかもしれません。)遠く離れていても、いつもお子さんのことを気遣っていた作者の人となりが感じられて、台風という季語がこのように家族愛の句になることに驚きました。

かえる:作者が身悶えるほど心配しているのが伝わりますので、よほど大きな台風なのでしょうね。任地とありますので、お子さんは立派な社会人。とはいえ、母親にとって幾つになっても子どもは子ども。髭が生えていようと、髪に白いものが混じろうと、幼児のころのままの可愛い、守ってあげなければならない存在なのです。大人になって独り立ちしている子どもと年老いた母親の意識のミスマッチ。少しばかり秋の物悲しさも感じます。

康子:大きな台風が来ると知り、お仕事でどちらかに赴いているお子さんを案じている。帰省する予定になっていたのか、もしくは赴任先に台風が来るのか。いずれにしても心配で家の中をウロウロしているような作者が浮かびます。シンプルに子を想う親心が描かれており共感しました。日常の何気ない事柄が句になるのだ、と勉強になります。