むべ:「秋の風」が季語。ブラジルの総人口の7~8%くらいがアフリカンだそうです。かつて奴隷として連れてこられた彼らは、奴隷解放令が出された1888年以降、ヨーロッパやアジアからの移民との間で混血が進んだ歴史があります。そして、アフリカンが結婚相手を選ぶ時、なぜか色白志向があるのです。多層社会のブラジルで、わが子には少しでも良い人生を歩むチャンスを与えてやりたい……という動機もあるかもしれません。作者はアフリカンの親子を見かけ、子どもは色濃く親御さんのDNAを受け継いでいるようで、混血ではなさそうだと思ったのでしょう。アフリカにルーツを持つ人々に堂々と胸を張って生きてほしい、そのような作者のエールを感じました。

うつぎ:ブラジルは多民族国家。黒人、白人、黄色人種と様々だが子供を見ていると屈託がなくどの子も可愛い。安堵と爽やかさを感じての句だと思います。

素秀:出自を思うと秋を憂う風なのかなとも思えますが、仲良く歩く親子に爽やかさを見たともとれます。今の時代には難しい句です。

あひる:つい、かえるの子はかえるという言葉を思い出しました。白人の子は白人、黄色人種の子は黄色人種、黒人の子は黒人…それぞれに特色があって、親に似ていて本当に可愛いです。爽やかな秋風は、人種の違いによる偏見などさらりと吹き飛ばすようです。

豊実:初めてのブラジル。日本人の子は日本人であるように、黒人の子は黒人という当たり前のことに不思議に感動した。遠い異国でも秋風の爽やかさを感じている。

せいじ:サンパウロやリオなどを歩くと黒人を多く見かける。この人たちはアフリカから奴隷として連れて来られた黒人の子孫なのだ。街を歩きながら作者は、この現実に歴史の重みを、人間というものの罪深さを感じている。通りに吹く秋の風が身に沁みてそこはかとなく哀れをそそる。