1 若葉してよき影落とす大欅

2 渦巻けるまくなぎ抜けて草の原

3 水軍城霞棚引く因島

4 玄関の柱に絡む薔薇の門

5 燕来る旧街道の古旅籠

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6 炎昼を着飾る少女駆け抜ける

7 明日香風待つているのは鯉のぼり

8 菖蒲池網持ち寄りて男の子

9 夜濯ぎす児の気に入りのワンピース

10 並び立つ陸墓の供花は苜蓿

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11 つっかえた初音背にしてウォーキング

12 イベントのアーチを飾る鯉のぼり

13 打水や風の生まるる石畳

14 夜蛙に眠り誘はれ旅枕

15 藤棚の下に笑顔の車椅子

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16 百千鳥榎大樹に反響し

17 二階まで木香薔薇の登り詰め

18 薫風や松の翠の脂匂ふ

19 山城を押し上げてをる緑かな

20 風薫る徒競走の弾む息

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21 山藤の現れては過ぐる高速道

22 風光る三連吊り橋一渡り

23 ゴールデンウイーク見知らぬ人に会釈され

24 鳥遊ぶ葉擦れの音や若葉風

25 新緑や部活掛け声城址跡

26 春惜しむ灯点りし山の小屋

27 子が駆けて長き藤房揺れやまず

28 公園のゲートボールや音涼し

29 浜大根に湖を渡りし風は白

30 鶯や父の書斎の小窓開け

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31 囀りに心地良きかな初夏の風

32 懐かしき刻を知らせて羽抜け鷄

33 池うらら餌を諦めて去る鯉も

34 春風の吐息や終日畑に出て

35 橋裏の水陽炎の長閑なり

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36 山滴る子と登山靴揃えたり

37 木道の組木にのぞく山すみれ

38 階段を共に上へと揚羽蝶

39 ゴールデンウィークなれどいつもの日課かな

40 吾子炊きし筍めしを初賞味

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41 鈴の音の聞ゆるがごと花馬酔木

42 居眠りの手には動かぬ団扇かな

43 一直線スタートラインに半ズボン

44 頬白の聞きなし浮かび起きる朝

45 涙の句詠むなとの枷四月尽

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46 緑陰に水音響く御殿山