みのる:決して模範解という意味ではありませんが少し視点を変えてみましょう。緋毛氈床几が置かれているのでごくありふれた茶店とかではなく、澄子解にあるように少し格調ある場所の設定が連想できます。客人らもまた一張羅をまとっているのだと思う。「床几の雪を払った」とは言っていないので、突然降り出した春の雪にあわてて軒先の床几にエスケープして衣服についた雪を払っている…と解するとちょっと趣が変わってきませんか。まさかの雪がお天気雨のように忽然と降り出した…という設定はまさに春の雪の特徴を捉えていてうまいですね。

康子:緋毛氈と春の雪の取り合わせに風情を感じます。季語「春の雪」により句全体が温かく優しい印象に感じます。冬の雪とは違うので、はらりと軽やかに舞い落ちてきたのでしょう。野点でしょうか、苑で一休みされているのでしょうか、野点傘もあるのかもしれませんね。払ふ、の動作により「今降ってきた」という印象になり「春の雪」を楽しんでいる様子が伝わります。一枚の絵を見ているようでした。

えいいち:私もかえるさんに習ってどう読み上げるか考えてみました。私は、五七五を崩さぬように「緋毛氈 床几に払う春の雪」という感じで上五を心持ちを空けて読み上げたいと思います。季節はまだ寒さが残る春のはじめ、何処の日本庭園へ吟行へ出向いたのでしょうか。中七「床几に・・」の「に」が効いていると思います。「に」とすることで雪が降っている、そしてそれを払っている、という今現在の動作や周囲の景が鮮明に浮かびます。上五中七の措辞に季語がよく響き、過ぎ去る冬や来る春を待つ情感・季節感が流れるように感じられました。

澄子:梅見茶屋か日本庭園の早春の抹茶席か雛祭りにちなんだ催しか……野外に設けられた数人腰掛けられる長方形の床几……そこには目にも鮮やかな緋毛氈が敷かれ大きな傘等立てかけられているかもしれません。不意にとけやすい春の雪が紅の緋毛氈に留まりそれを思わず払う仕草…… 紅の布に白い牡丹雪のふわっとした結晶を一瞬見た思いです。春の雪を払うのはお店の人か御世話係の方なのか……そんな情景を見つめている作者の姿を思いました。

かえる:非常に難しかったのですが、緋毛氈床几に、でいったん切り、払ふ春の雪、に続くと考えました。床几に鮮やかな毛氈を広げたところに、思わぬ春の雪が。緋色の毛氈に、真白な雪のコントラストは美しいものの、このままでは腰掛けるひとを困らせてしまう。茶店の店先なのか、野点の席なのか。いずれにしても主人公はホスト側。その目線で春の雪を詠んだのではないかと思いました。