みのる:みなさんの鑑賞が的確なのでみのるの出番がなくなってきました。「胸高に」の措辞は女生徒の写生であることを暗示していますが、同時に新しい旅立ちへの夢や希望に満ちている胸でもあるのです。

康子:下五に置いた「卒業す」の措辞に感服しました。「卒業生」とした場合と比較して「今ここに卒業していく袴姿の学生さんがいる!」という印象を受けます。しっかりと襟元が詰まり衣紋が抜け、胸元には一切の皺がなく、キリッと袴紐を締め真っ直ぐに前を向く立ち姿。また袖袂を振って颯爽と歩く姿が浮かびます。女子大生でしょうか、将来への夢と希望に溢れているのでしょう。見ている方も応援したくなりますね。卒業は寂しくもありますが、清々しさを感じる句でした。

澄子:中七「きりりと」の措辞が秀逸。昨今袴姿は女子大生の卒業姿として定着。三月卒業シーズン街を行き交う華やかな袴姿をよく見かけます。胸高にきりりと締め上げた袴姿は若々しく凜凜しく質実清楚……なんとも言えぬ高揚感を感じます。巣立ちゆく喜びと緊張感……春は別れと旅立ちの季節なんだということを袴姿から実感します。余談ですが私が卒業した地方の地味な大学は袴姿は数えるほどの少数派。私は袴に足元はブーツという格好に憧れました。後日袴姿多しという都会の大学を卒業した友人の話を聞き 都会と田舎の落差を思い知らされました(笑) 

かえる:胸高、きりり、で弛みのない、肌の張り切った若い女性が無理なく浮かびます。モデルは女子大生でしょうね。社会への船出を控えている卒業の日。式典を控え複雑な感情が入り混じる乙女の姿の描写はなんとも美しいです。最近は珍しくないのも承知していますが、個人的には小学校の卒業式の袴は違和感あり。衣装には、その年ごろであればこその美しさというものはあるように思います。

むべ:胸高に袴を着付けているので、女袴でしょうね。最近では小学校の卒業式でも袴を着るようですが、ここでは「きりりと」という措辞からやはり大学や短大の卒業式であろうと想像します。進学や就職という次なる目標へ向け、人生の門出を迎えた日。師や友との別れはさびしい一方、がんばってきた数年間を晴れがましく思う気持ちや将来への決意も。きりりとした袴姿の卒業生に、作者は心の中でエールを送っていることでしょう。