みのる:川か海なのかはわかりませんがいづれにしても出発まちで停泊している釣り船、川下り船、観光の屋形船の類で舷から手を差し伸べれば水面に触れるような小型船だと思います。荒波ではなくひた寄す波が周期的に舷をたたいているのである。しかもその音はとてもリズミカルで小鼓を打ち鳴らしているかのように聞こえたのです。

えいいち:船端を波が叩く波の音はポッタン、パッタン、ペッタン・・というような小さな音のように感じました。辺りが静かなのでよく聞こえるのでしょう、風鈴の音のような涼しさを感じます。

康子:一読して私は夜のイメージが湧きました。暑さも少し和らぐ夏の夜、浜辺を歩いていると船着場から波の音が。船の側面を打つ波の音と分かりその音から涼しさを感じた。暗い夜の浜辺にその波の音だけが聞こえていて、昼間の暑さとは打って変わった涼を楽しんでいる様子を想像しました。

澄子:「波の音涼し」と結ばれ 音そのものを詠まれています。作者は水面に近いところにいて 船端を叩く水の音を聞き分けています。私の経験からのイメージですが 屋形船などは立派な舟でも意外と水面が迫ってくるような感じで 手を伸ばせば水面に触れるのではないかと思うぐらい水面に近く 舷(舟の左右)を打つ水の響きが室内にいてもはっきり聞こえました。夕涼みのための川遊びの舟が停泊するすぐ近くを通りかかったのか 舟に乗り込み船出を待っているのか…………揺らぐ昏い水面と対岸の滲んだ灯りが思い浮かびました。 

かえる:川下りの船を思い浮かべました。朝早く、観光客のまばらな時間に乗船している。まだ船の数も少なく、夏といえどまだひんやりとした気配を残していて、なおかつ静か。舳先が水を掻き分け、川波が立ち、それが船端を叩く音が耳を楽しませている。静かな夏の朝の涼やかさ、幸せな気持ちが伝わってくるようです。

むべ:海か川かわかりませんが、渡し船のような小型船を想像しました。船は動いているのか止まっているのか?「たたきし」とありますので、動いているのかなと思いました。船端は右舷左舷のことでしょうね。水を割り進む船体に、波が寄せてザーッと音を立てているのでしょう。気温も高く太陽の高度も高い夏の日、周囲には海岸線の岩肌や松の木々、あるいは川の両岸の並木などが見えます。そのような環境で、作者はふと耳にした波の音に涼しさを感じたのです。暑い中でこそ感じる涼しさに感じ入るセンスがすばらしいと思います。