みのる:「縁結び絵馬」まで一気に詠む句またがりの句です。良縁に恵まれるようにと祈願の絵馬が犇めくほどにかけられているのです。「東籬の菊」という言葉があります。大規模な菊花展というよりは、折から菊の候なのでめでたい雰囲気を醸すようにと立派な鉢植えの菊が並べられているのでしょう。

えいいち:たくさんの縁結びの絵馬がカラカラ音を立てて並んでいるようです。縁結びというとすぐに結婚などを想像してしまいますが・・作者は絵馬を見てにこやかに微笑んでいる気がしますね。結婚というと今のひとは西洋式の6月挙式(ジューンブライド)を望むの方が多いようですが私の感覚では暖かくなって来た春や秋晴の秋などが婚礼シーズンかと思っていますので「菊日和」の季節感と「縁結び絵馬」はマッチしているなあ、と感じますね。

澄子:菊花展が開催されている境内の景を想いました。縁結びの神社 犇めく祈願絵馬 菊花展…………華やかで色彩に溢れ艶めいた印象を与える御句ですが 秋晴の澄み渡る空 菊の香りなど 背景にすっきりとした空気感を感じる御句だと思いました。

康子:前句同様、十七文字に沢山の情報が詰まっているのに決して煩くなく、一枚の絵になる様に詠まれている。学びたい所です。縁結びの絵馬が犇いているので恐らく縁結びでは有名な神社なのでしょう。風が吹いて絵馬の音もしているのかもしれません。そこに「菊日和」。菊花展でも開催されているのでしょうか、お天気の中、苑いっぱいに菊の香りがしているのでしょう。五感たっぷりに表現されている句です。また「縁結び絵馬」で切れるのか「縁結び」で切れるのか、それとも切れがなく最後まで一気に続くのか、と考えていると、犇いているのは絵馬でなくもしかして菊?と分からなくなってしまいました。

かえる:縁結びで有名な神社ですと、参拝者も若い女性が多くて華やかでしょうね。多分絵馬も可愛らしいデザインで、ひとつひとつに女性らしい文字で願いが書き込まれていて。作者は菊を目当てに来られて、犇く絵馬と乙女たちの群に少し驚かれたのかもしれません。前句に続き、お花の名前と日和の季語が使われていて素敵ですね。私も季節の花で日和の句を詠んでみたくなりました。

むべ:絵馬に願いを託した経験がないのですが、縁結び絵馬が犇めいているということは、かなり有名な縁結びの神社なんですね。多くの参拝客が良いご縁を願って、絵馬を掛けていったということかと思います。旧暦9月9日の重陽の頃は、暑すぎず寒すぎずちょうどよい穏やかな気候で、神社にも参拝しやすい。おりしも境内で菊花展が開かれていたかもしれません。作者は、菊を愛でつつ絵馬に託された願いに、ご自分の願いを重ねたかもしれません。