みのる:総玻璃のビルというとすぐに思いつくのはリクルート系のビルですね。ヒントに写真を貼っておきました。早春の頃の太陽光はまだまだ照射角度も低いので「弾く」の措辞にも実感があります。雲ひとつ無いようなお天気の感じもあり、玻璃窓に反射した日が蒼天へオーラを放っているような雰囲気も連想します。

澄子:下五「弾く」という表現に春の光の柔らかさを感じました。輪郭がひとまわりふわっと膨らんだ感じでしょうか…………光を浴びる、放つ、跳ねる、返す、刎ねる……違う印象を与えると思います。太陽の高度もあがり地面からの照り返し反射も受け 硝子張りのビル全体が輝く様がよく伝わってくる句だと思いました。

かえる:全面ガラス貼りの高層ビルをイメージしました。空に近い分、朝日も夕日もまともに浴びるのでしょうね。一辺が鏡と化して、太陽を大写しにする様が、大層美しかったのでしょう。日光は季節を問わず降り注ぎますが、夏の日では強すぎるし、冬は弱々しい。秋の陽射しは柔らかいが、少し憂いが出てしまう。弾くような若々しい光はやっぱり春。季語もがっちり動かないなあと感心しました。

康子:私はビル街で働いていますが、特に冬から春にかけてビルに当たる日差しの変化を感じます。朝の変化が大きく、冬はビルの上の方にしか日が当たらず道も暗くて寒いですが、春にかけては少しずつ下の方まで当たるようになり街も空も明るくなります。特に総玻璃のビルは燦々と日を刎ねて、合わせ鏡となり周りのビルや木々も明るくします。「春光」は夏の光と違い柔らかく、春を待ち望んでいる気持ちを明るくしてくれます。作者も玻璃に映る柔らかい光を眺め春を感じ、気持ちも「弾けて」いるのかな、と思いました。

むべ:新宿にあるような全面ガラスの高層ビルをイメージしました。ガラスの表面積が広いため春の陽光を受けてビル全体がキラキラと輝いているように見えたのでしょう。人工物であるガラスと、自然物である春光とのコラボレーションの妙に作者は息をのんだのかもしれません。春光という季語は、掲句では春の陽光を指していると思いますが、まばゆい光を含めた春景色(春望)がもともとの意味、子季語の春色/春の色は風の色を指すなど、大変幅広いようです。